ウスティカ島 −イルカが泳ぐ島−
パレルモから船に乗って57Kmほど北上したティレニア海上に浮かぶ孤島。数百年前 の火山活動によって生まれたこの約8.5平方キロメートルの凝固した溶岩で形作られ た島はダイバー達に「天国の島」と呼ばれる。島固有の植物群生(コロニー)と 透明度のある美しい海を持ったこの島はまさに天から授けられた自然の賜と言えよう。事実、この島は1986年にイタリア最初の「海洋自然保護区」の認定を受けた。 新石器時代から人が住みついていたこの島は今では"vacanze"を過ごすために夏には 多くの観光客が訪れる。
我々を乗せた船はパレルモ港を朝出港して一路ウスティカ島へと向かう。小一時間 ほどした頃であろうか、デッキの上で観光客が歓声をあげるのが聞こえた。なんと 船と併走してイルカが泳いでいる、まるで、我々を歓迎するかのように。
やがて船は島の表玄関である小さな入り江の桟橋に横付けになった。 なんと可愛らしい島なのであろう、一枚の絵はがきを見ているようだ。 島の中心であるウンベルト広場を目指して緩やかな坂を上がっていく。燦々と輝く 陽光の中、パレルモの喧噪を離れてゆったりとした時間が感じられるリゾート の光景が現れた。ここではまるで時間が止まっているかのようであった。
今夜のホテル"Ariston"に荷物を預けさっそく海辺へと出ることにした。 島の中心である広場は観光案内所やスーパー、バール、レストランが集まっている。 まさにリゾート地としては申し分ない立地条件を満たしている。 まずは広場のスーパーで食料を調達し、隣のバールでレモンのグラニータを頬張る。 頭の芯まで染みわたる冷たさが、汗ばんだ体に心地いい。
さて海岸までは島を循環しているミニバスで向かおう。バスは島の外周を巡回して(一周しても 30分もかからない)、観光客の貴重な足となっている。 島の海岸は「海洋自然保護区」の為に、遊泳地区が厳しく決められているが、 海岸でのんびり日光浴するぶんにはさして問題はない。ただしダイバー達は 別。しかし、一度潜ればそこは夢の世界が広がる。
日が傾きかけた頃、我々はお腹を空かせてホテルへたどり着く。シャワーを浴びてさて、今夜のディナーは?友人のお勧めに従って、Ristorante "Mamma Lia"に決定。 ここは店名通り"リア夫人"が腕を振るうレストラン。 島で水揚げされる魚介類なかでも海老料理が人気で、 島で栽培されるレンズ豆のスープ"Zuppa con le piccole lenticchie"も捨てがたい。 ワインを片手に仲間達との楽しい語らいの中、時間はゆっくりと流れる。 火照った体を心地よい海風が通り過ぎて行った。
翌日朝食を済ませた後、午前中を灯台のある海岸でシュノーケリングすることに した。潜ってみると透明度は想像以上に澄んでいた。時折可愛らしい小魚達が姿を 見せてくれた。しかし、シュノーケリングでは限度があり、それ以上望むのは 贅沢と言わざるを得ない。 午後はホテルに戻り軽くピッツアでランチを済ませ、ホテルでチャーターしてくれた エンジン駆動のゴムボートで“Grotta (洞窟)巡り”をすることにした。 この島は火山活動と、そして長い年月の浸食作用によって鍾乳石の崖には 数多くの“Grotta”が生まれた。ボートは桟橋を後にすると波を蹴散らして、 島の南側を時計回りに進んだ。
まず最初が“Grotta Azzurra”(青の洞窟)。恐らく読者の皆さんはまずカプリ島の同じ洞窟を思い描くことでしょう。大きさから言えば こちらのGrottaはかなり小さいが、その美しさでは引けを取らない。
入り口から一歩洞窟内に足を踏み入れればれば、洞窟内の海はまるでコバルト・ ブルーのインクを溶かし混んだように染まっている。手を差し入れれば、あっと いう間にそのブルーの色に染まるような錯覚を覚えた。その時、ガイドの青年が 「さあ、みんなで泳ごう!」と提案した。 皆恐る恐るボートから足をせり出し、一人又一人とコバルト・ブルーの海へと 飛び込んだ。底は足が届かない深さではあったが、水温は冷たくなかった。 “Grotta Azzurra”で泳ぐという、信じられない体験にみんな すっかり興奮していた。ただし、ここは午後の時間帯に来なくては意味がない。 太陽の光がこの洞窟に差し込む時間帯だから。その隣は“Grotta delle Colonne”(円柱の洞窟)、入り口の崖がピラミット状に そびえ立つ。まるでクレオパトラの宮殿の入り口の如く。入り口前の海面下は 大きく削り取られた玄武岩のテーブル台地となって、人が降りても足が立つ浅さ。 もう全員すっかり洞窟巡りに夢中で、気が付くともうパレルモ行きの船の出航時間が 迫っていた。
洞窟はこの他にも、 “Grotta dell'Accademia”(アカデミアの洞窟)、“Grotta Tuono”(雷の洞窟) “Grotta Segreta”(秘密の洞窟)、“Grotta di Blasi”(紋章の洞窟) “Grotta dell'Uono”(男の洞窟)、“Grotta delle Barche”(船の洞窟) など数知れない。 夢のような忘れられない2日間の"vacanzze"・・・・。この思いを胸にパレルモへの 帰途の船旅についた。
INFORMAZIONI: RISTORANTE "Mnmma Lia"
Piazza Umberto 1
Tel:8449280Ariston
Via della Vittoria 3
Tel:8449042