Cefalu' −中世の面影が残る町−
パレルモからティレニア海沿いに東へわずか74kmに位置する城壁の町 “チェファル”、一風変わったこの地名は「小さな頭状の岩山」を表すギリシャ語の "Kefaloedio"に由来するとか。この小さな中世の面影を色濃く残す町は夏になると ヴァカンツェを楽しむ人達で賑わいを見せる。
この町の起こりは紀元前5世紀に遡り、ギリシャ時代軍事上の重要な前哨基地として 要塞が築かれたことに始まるとか。この町を見下ろす岩山にはその当時の「ディアナ 神殿」の遺跡がわずかに残っている。
その後時代は下り、ノルマン王ルッジェッロ2世の治世下ここに素晴らしい芸術が花咲いた。その象徴的な建造物が「大聖堂」で、この聖堂内にはシチリアでも屈指の イスラムの影響を強く受けた素晴らしい多色モザイクの壁画があり、 訪れた人々を敬虔な思いにさせる。このモザイクの壁画は当時文盲であった庶民にキリストの教えを説く手っ取り早い手段だったそうで、キリスト教徒でなくても その荘厳さ敬虔さがこの壁画から伝わってくる。
この町を見下ろす小高い岩山には中世の城壁が残っており、30分程の道のり(決して楽な坂道ではないが)で、「ディアナ神殿」を通り頂上に行く着くことが出来る。 しかし、この辛苦も一度山頂に出ると、素晴らしい大パノラマに吹っ飛んでしまう。 西には遙かパレルモ、トラーパニ方面へ延びる海岸線が緩やかな曲線を描いて延び、 反対の東側には岩場海岸づたいにどこまでも透き通るような美しい海が広がり、 ヨットが白い曳航を後に滑るように波間を走っている。どんな美しい絵はがきでも この現実のパノラマには及びもつかないだろう。
さて、町に降りると「大聖堂」前の広場にはパラソルを広げたバールやレストラン があり、ここで乾いた喉を潤す為にレモンのグラニータでも注文して一服するのが いいだろう。
ここから西へと足を運ぶと、海岸近くに中世の洗濯場跡("lavatoio") にぶつかる。チェファルを訪れた人が必ず立ち寄るこの洗濯場には清らかな水が こんこんと湧き出て、暑い夏の日中でさえここだけはひんやりとしている。
その昔、地元の人々はここを“'u cuumi”(“il fume”=“川”を意味する。) と呼び、数十年前までは実際に使われていた。かのボッカッチオは、ここを “cefaloide(ギリシャ語cefalo=頭部)”と名付けたと伝えられる。そして、 入り口右側の石段脇には この泉を称える Vincenzo Auria の詩編が書かれてある。
"Qui scorre Cefalino, piu' salubre /
di qualunque altoro fume, piu' puro /
dell'argento, piu' freddo della neve""ここにチェファリーノは流る、さらに健やかに/
他のいかなる流れより清らかに/
銀の如く、その冷ややかさは雪の如く"静けさの中でふと目を閉じると、当時の女性達がここで洗濯物を抱え、 仕事より世間話に花を咲かせた光景が浮かんできた。
それでは海岸へと出てみよう。途中町とビーチとの間は露天商が軒を連ね、観光用の「ご当地Tシャツ」などを売っている。ビーチはもう目の前、砂浜が緩やかにカーブを描き何処までも続き、のんびりとヴァカンツェを楽しむ海水客で賑わっている。 と言ってもパレルモ市内のモンデッロ海岸の芋を洗うような混み方ではなく、木立の下でのんびりと本を読んでいるカップルや、何もせずに昼寝を楽しむという光景が。
もう一つつけ加えておこう。あの映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の舞台の 一つがここ"Cefalu'"なのです。巻頭のレモンの樹をバックに広がる青い海、二人が 雨の降る桟橋で抱き合うシーン。これら海をバックにしたシーンはほとんどここで 撮影が行われたそうです。