LAGO DI MAGGIORE
アルプス南山麓には数え切れないほどの湖が散在するが、その中でも特に三大湖と称されるコモ湖(lago di Como)ガルダ湖(lago di Garda)マッジョーレ湖 (lago Maggiore)はその美しさに魅せられ世界中から観光客が足を運ぶ。
古来からドイツ・オーストリアと言った内陸ヨーロッパ地方の人々はアルプス山脈を越えて初めて足を踏み入れた瞬間、その温暖な地中海気候と咲き乱れる色とりどりの 花々を前にして感嘆の声をあげたと聞く。
今日まで数多くの文人や画家達を魅了し続け、愛されてきたこの地を是非一度訪ねて欲しい。とりわけマッジョーレ湖は風光明媚なことで名高く、湖に面したストレーザ(Stresa)の町は高級避暑地として世界中から裕福な人々が優雅にヴァカンスを過ごすために訪れる。湖岸に沿って続く遊歩道(Lungolago)は遥か沖にボッロメオ(Borromeo)の島々を望め、湖上にそよぐ風に吹かれての散策はヨーロッパ随一の高級避暑地の雰囲気を味合うには申し分ない。
近くのカッフェのテラスに腰を下ろしカプチーノを片手にのんびり時を過ごすのも悪くはない。
私たちは少し離れたバヴェーノ(Baveno)まで足をのばし、湖岸のカッフェで軽く食事をとった。微かに靄にかすむアルプスの山々を背景にした美しい風景を満喫しながら・・・・・。
ここから湖上の3島(Isola dei Pescatori、Madre、Bella)へは遊覧船が約一時間おきに出港している。その中でも最大のベッラ島(Isola Bella)は17世紀に建てられた豪華なバロック建築の宮殿(Palazzo Borromeo)で名高い。まるで島全体がこの宮殿と庭園から成り立っていると言っても過言ではないだろう。贅の限りを尽くしたこの館の内部はそれぞれ趣向を凝らした大広間が続き、その一つ一つに訪れた者は目を見張る。 とりわけ舞踏会用の大広間と地下にある石で囲まれたまるで洞窟のような奇妙な部屋は必見である。
薄暗い部屋を抜け出ると、太陽が燦燦と輝く中10以上のテラスからなる階段状に設計された見事な庭園が広がる。 エキゾチックな花々が生い茂り放し飼いの白孔雀が羽を広げ、高みにはボッロメオ家の紋章に描かれたユニコーン像をはじめとする彫刻で飾られた建物が聳え立つ。 テラコッタの鉢に植えられたレモンの枝越しに眺める湖上の景色はまるで映画のワンシーンのよう。
日が傾き始めた頃、私たちはここから10Kmも離れていないオルタ湖(lago d'Orta)に向かった。今宵の宿はオルタの湖畔にあるアラブ風のホテル"ヴィッラ クレスピ"(Villa Crespi)。
その豪華さはこの地方いちばんであろうし、併設しているリストランテも ミシュランの星を取ったシェフ ナターレ・バッケッタによってその料理の確かさは保証済み。その門構えに反して少しも敷居の高さを感じさせないのはここを取り仕切る女性支配人アンネマリーエ夫人による心憎い気配りがなせる業だろう。
食事前に夕日が沈むまでひっそり静まり返ったオルタ湖畔を散策した。
今宵は用意された2種類のコース料理の中から"Piccolo Menu Degustazione"を注文。
ワインは当然この地方随一の名醸ワインと詠われる作り手 Cantalupo による"COLLIS BERCLEMAE"。このワインはこの地方でスパンナ(spanna)と呼ばれるネッビオーロ種の葡萄から作られるボディーのある赤ワインで、その名は古い葡萄畑の名前に由来し限定されたその畑から収獲された葡萄のみで作られる格付けワイン(cru)である。
さて肝心の料理は、「野菜のキッシュ」(stuzzichino/付き出し)、「じゃが芋とポルチーニ茸の重ね焼き 」(antipasti)、「鶏レバーのラヴィオリ」(primi)、「スズキとアーティチョークのパイ包み」(secondi)、「ヘーゼルナッツのセミフレッド」(dolci)。 料理にはシーズンの白トリフがたっぷりと振り掛けられた。
洗練された料理の数々はどれも文句のつけようのない出来であった。いずれもこの地方の食材を上手く取り合わせたもので、シェフの腕の確かさを改めて思い知らされた。LAGO D'ORTA
翌朝、朝靄の中に静かに佇むオルタ湖畔を散策してから朝食を済ませ、オルタ サンジュリオ(Orta San giulio)へと向かった。
マッジョーレ湖とはモッタローネ山を間にわずかに10Kmと離れてはいないというのに訪れる観光客もまばらである。かつてロンゴバルド王国の首都であったこの中世の重々しい石作りの町並みは不思議な静寂さだけがあたりを包み込んでいた。 その静かな佇まいは私たち訪れた旅人にマッジョーレ湖での喧騒を忘れさせ心地よい安らぎを与えてくれた。
丘の中腹には1485年に建てられたと伝わるモッタ教会(La Motta)がある。シーンと静まり返った静寂の中、私たちの足音だけが後に残った。
湖のほぼ真ん中に小さな サン ジュリオ島が浮かぶ。小さな船が時折観光客を乗せては静かに湖面を遠ざかる。小船は 島のサン ジュリオ聖堂の前に着く。
聖人 サン ジュリオを祭るこの聖堂は12世紀に建てられ、バロック期に改修がなされ今日に至っている。内部にある黒大理石で作られた説教壇は12世紀の作とされる。浮き彫り装飾で飾られたロマネスク様式の見事な作品で一見の価値がある。残念ながら訪れた時には内部には修復用の脚立が組まれていたが、天井や壁一面に描かれたフレスコ画も16世紀の作と伝えられ思わず見とれてしまうほど。
島内は僅か10分足らずで一周してしまうが、この枯れた世界がなんとも風情があり歴史と苔に覆われた石畳の細い路地を歩いているだけでも満足と言うものである。対岸の オルタ サン ジュリオ の町へ戻り、軽く昼の食事を済ませトリーノへの帰途についた。この3日間の贅沢な思い出を胸に。